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「自信なんて、全っ然ありませんから」
乳液をつけながら、私は返した。
そして、クリームファンデを塗ろうとした、その時。
不意に、長い指先に顎をすくわれる。
「……!」
驚いて見開いた私の目に、立花 葵の端正な顔のアップが飛び込んできた。
「綺麗な肌」
そう言って、彼女は細い親指を少しだけ、私の頬に滑らせる。
同性で、恋のライバルなのに、あまりにも綺麗な顔立ちに、一瞬目を奪われてしまった。
そんな私を品定めするように、彼女の視線が向けられてくる。
「ノーメイクの綾瀬さんて……」
じっと私を見つめてから言った。
「何か、高校生みたい」
鼻先で笑うと、立花 葵の手は私から離れ、ヒールの靴音を鳴らしながら、洗面所を出ていく。
「なっ……なっ……」
胸の底から沸き上がる感情が、爆発した。
「何なのよ~!?」
私の声が、洗面所に反響する。
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