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以前からうすうす思ってたんだが、この二人、結構過保護なのだ。二人ともわたしより歳下のくせに。
じっと疑り深い目つきでこちらを見ている彼らを安心させなければと思い、慌てて喋り出す。
「本当に、あんたたちが心配するようなこと何にもないよ。だって、あの子はあたしには何にもできないんだから」
キス以上のことは。
「なんでそう自信たっぷりに断言できるのよ?」
朱音が不審げに問い返す。
「それは」
思わず言いかけて口を噤む。女の人に対してそういうことをするのが無理だから。男としか付き合った経験がないから。…どっちも、野上の純然たる個人的事情である。わたしが他人に言うのはアウトだろう。
野上本人が自分で言うのならともかく。わたしにはあっさり打ち明けたが、あれは状況が状況だったから。
「…それは、いろいろ事情があって説明は難しいんだけど。でもわたしだって大人だし、大丈夫って確信がなければああやって二人きりでずっと仕事できてないよ。だから、そこはわたしを信用してくれない?…ついでに野上も」
「いやあいつは信用しない」
二人きれいに声が揃った。本当に仲良しだなぁ。
朱音が腕組みをして、身体をそらし気味にわたしを見下ろした(余談だが、彼女は割に身体が小さい)。
「…しょうがない、ここはとりあえずなずなの言い分を信じることにするけど。でも何か怪しいなと思ったらちゃんと言ってね。あとセンサー切らないで。誰でも自分の危険情報については、過小評価する傾向があるのよ」
「肝に銘じておきます」
わたしは頭を下げた。
友明も身体を前に乗り出して、わたしの目を覗き込んだ。
「危ないと思ったらすぐ俺に連絡しなよ。ここからお前の家(事務所だ!一応)近いんだから。すぐ駆けつけられるし」
おぉげさだなぁ…。
「そんなみんなしてあいつを狂犬みたいに。大体、市井くん昼間起きてないじゃん。電話しても起きられないんじゃ?」
「お前が考えてるよりちゃんと起きてるよ!バー経営って結構やること一杯あるんだぞ」
「はいはい」
今度はわたしと朱音の声が揃った。
「…ま、心配してくれてるのはありがとう。気持ちは受け取っとくよ」
そう言ってとりあえずまとめようとすると、彼らは再びキッとなって言った。
「感謝はいらない。警戒だけしとけ」
「どんな事情か知らんけど、とにかく油断するな!」
…はいはい。
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