39人が本棚に入れています
本棚に追加
「セリさん、昨日お休み何してらしたんですか?」
休日明けで疲労回復したのか、心なしか色つやのいい顔で出勤してきた野上がわたしに聞いた。差し出された淹れたてのコーヒーを受け取りながらわたしは単語の羅列のみで答える。
「…洗濯。掃除。睡眠。あと、市井くんの店」
「『AFTER LIFE』、ひとりで行ったんですか。ずるいなぁ。いつも俺も連れてってくださいって言ってるじゃないですか」
野上が不満げにむくれる。
「だって休みの日じゃん。仕事終わりならともかく」
「呼んでくれたら休みでも来ますよ」
「やだよ休みの日に仕事仲間と顔合わせるなんて」
「ひどいなぁ」
そこそこショックを受けた表情で野上はわたしを見た。わたしは知らん顔でコーヒーを飲む。マジ美味い。これがないのが、休日はちょっとね。
「お前ホント、コーヒー淹れんの上手くなったな」
「結構研究してますもん。セリさんコーヒー好きだから、絶対喜んでくれると…、じゃなくて。話逸らしてませんか?」
「は?」
マジ逸らしてないです。なんの話してましたっけ?
野上は椅子をわざわざ引っ張ってきて、わたしのデスクの横にどん、と腰掛けた。
「だから、市井さんですよ。以前から思ってたんですけど、市井さんってセリさんのこと、好きですよね?」
「はぁ?」
わたしは思わず野上の方を見てしまった。何言いだしてんのコイツ。
「絶対そうですって。いつ行っても、ふとした隙に見ると結構俺のこと睨んでるんですよ。俺にだけ素っ気ないし、多分セリさんのことで、俺を敵だと思ってるんですよ。ライバルですよ」
「アホかお前」
呆れるしかない。…まぁ、敵と思われてる件は当たらずとも遠からずかも知れないが。
「大体、あたしのこと好きだとして、何でお前がライバルになるんだよ」
「だって、俺セリさんのこと好きじゃないですか」
「あそうか」
それはもう既定の事実なのか。じゃあしょうがないか。
相手にしてるとキリがないので、わたしは自分のデスクのパソコンに向き直った。
「お前、もう仕事しろ。どうでもいいよそんなこと」
「セリさん、市井さんに対して油断し過ぎですって。昔からの友達かどうか知らないですけど、セリさんを見てる目、時々友達じゃないですよ。セリさん警戒心なさ過ぎです」
昨日お前に関して、向こうから同じこと言われたわ。
最初のコメントを投稿しよう!