第四章 索敵行動、戦闘開始

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注文を取った友明がカウンターの中へ去っていくと、朱音はテーブルの上に置かれたソルティードッグ(だと思う、多分。グラスの口の周りに塩がついてるやつは、わたしには全部ソルティードッグに見えてる)に手を伸ばすと、改めてわたしを見た。 「今日はあれ一緒じゃないの、何だっけ?あの犬男子」 結構な言われようだ。 「今言ったこと、友明がさっき言ったのとほぼ同じだからね」 「げっ、市井さんと同じ思考回路か。ぞっとしないな」 顔を顰める朱音。ここら辺もよくわからないというか、わたしから見ると友明と朱音は気が合うというか似た者同士というか、息がぴったりとしか思えないのだが、本人同士はいたく反目し合っているらしい。口の悪さといい根性の曲がり具合といい、微妙に天然がかっているところも含めて魂の双子といった感じなんだけど。 「今日は休みだったの。休みの日に仕事場の人と顔を合わせる趣味はないよ。休んだ気しねー」 「なずなちゃんとこさぁ、休みが何曜日かちゃんと決めてる?私から見ると、全然バラバラに感じるんだけど」 因みに彼女は出版社勤務の編集者。カタギのような、やくざなような。不規則はお互い様である。 「無論決めてないさ。仕事の終わらない時は働き、余裕がある時は休む。まぁトータルで見たら、一週間につき一日か二日休みがあるように辻褄合わせてはいるけどね。…以前はそこら辺マジで適当だったけど、今は従業員いるからそうもいかない。労働基準法違反になっちゃうし」 友明が持ってきてくれた飲み物(もうほぼコーヒー牛乳といっていい特製カルーアミルク)をわたしが受け取り、一口飲んで人心地つくのを見たのち、朱音は肩を竦めるようにして言った。 「そういう意味では、犬くんもちゃんとなずなちゃんの役に立ってるわけね」 結構ひどくないか。 わたしは必ずしもいつも野上の側に立つ人間ではないが、公平に見てあいつにもいいところが全くないというわけではない。 「そう言ってやるなって。ああ見えて(どう見えてか。よく考えてみたら、この言い草もそれなりにひどい)仕事上ではあいつもかなり役に立ってるんだって。何しろあたしずっと自分ひとりでやってたじゃん。だから、自分の頭の中で把握して自分で処理してるうちはまあまあ何とかなってたんだけど、気づけば今までの記録も本のリストも全部めっためた、お話にならないレベルなんだよね。わたし以外誰にもわからないし」
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