第四章 索敵行動、戦闘開始

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二人の心配そうな様子を見て、彼らの想像してる『困ったこと』が、実際自分の抱えている問題よりずっと深刻なものであることに気づく。わたしは慌てて、二人を安心させようと言葉を探した。 「いや、好きっつったって、そういうんじゃないんだから。ヘンなことが起きる心配はしなくていいよ」 口にしつつ、どうなのかなこれは嘘かな。いや、だって、久々に思い出したけど、女は無理なんだよね。どの程度無理なのかは最近あやふやというか、定かではないけど、今されていること以上のことはないと見ていいはずだ。じゃないと、無理とは言わないじゃん。 「じゃあ、ベタベタ触られたり変なことされたりしてはいないってことだよね?」 友明も黙ってこっちを見ている。…うーん、いやまさに、起こっている事態はそういうことなんだけど。でも、この人たちが想定している被害は、「意に反して」行われていることだと思う。そこいら辺りが自分でも、なんか今ひとつ被害者面できないところである。 本当に、心底嫌で、絶対無理と思っていたらこんな風にうっかりしたり油断したりしていられないだろう。野上の行為に、誰とは言わないがまあそれはないよ!という間柄の相手(匿名)をこっそり代入して想像してみる。…うん、ない。多分同じ部屋に二人でいる間、無意識にしろ警戒と緊張は解除されないはず。相手が席をスッと立った瞬間、パッとそっちに目が行くだろう。何が目的で動いたのか、確認するまで落ち着かないに違いない。 自意識過剰とわかっていても。 そう考えると、わたしの油断の裏には、 「多少のことならされてもまぁいっか」 「本当に嫌な段階になったら殺してでも逃げればいいし(殺せないだろうけど。言葉の綾)」 「別に指一本触れられるのもいやってわけでもないし」 といった、適当な、ゆるい気持ちがあるのは否定できない。無論、女に対しては最後までできないはず(何せ本人が自分でそう言った!)という確信が更なる油断を招いてはいるのだが。 そう考えると、だんだん野上だけが悪いわけじゃないんだろうな…って思えてきて。ここであいつひとり、悪者にするのは忍びない。それにわたしがどう思うかに関わらず、実際にあの部屋でわたしと野上が繰り広げてる攻防の内容を知ったら、この人たちがどんなにわあわあ騒ぎ出すか、大体想像つくぞ。
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