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「うけけ、これで分かったよな。明日までに3万だ。良いな?」
男が笑いながら言うと、突然、優の様子が変わった。それは、さっきまでの純粋無垢な少年とは違う、悪意を持った何かだった。
「ちっ、臭せぇ足で踏みやがって」
始め、その言葉が優から放たれたことに、男達は気が付かなかった。しかし、次の瞬間、少年は両足で立ち上がり、はっきりと、男を睨み付けていた。それは、変貌とも呼べる変化で、彼の体が当然、骨格ごと変形を始めた。
「な、何だ?」
男達はそれを見ていることしかできない。優の体はメキメキと音を立てながら、ただでさえ小柄な体はより小さく、栗色のサラサラした短髪は、肩の辺りまで伸びた。そして、全身は丸みを帯びて、尻が大きく膨らみ、同時に、胸も柔らかそうな膨らみを生み出していた。
「お、おい。あれ、女だ。うへへ、女になってる」
男がそう口にするまで、皆、我を忘れてその光景を見守っていた。
「なあ、村井、アイツ男だよな?」
「い、いや、そんなことより、滅茶苦茶好みのタイプなんだが、あの娘に、お兄ちゃんとか言われてみてぇ」
話が関係ないことに脱線していると、優であった少女は、男の顔面を右手で鷲掴みした。そして、さっきよりも高い、黄色い声で言った。
「殺してあげる。お兄ちゃん」
男は二重の意味で死んだ。それは、好みの美少女からお兄ちゃんと呼ばれたことによる萌死に。もう一つは、その美少女の右足で股間を強打されたことによるショック死だった。
「ごはぁ、我が、生涯に一片の・・・・」
言い掛けたところで、少女の蹴りが顔面に当たり、そのまま沈んで行った。
「さあてと、あたしをバカにした罪、どう購ってもらおうかな。檜山組次期当主である、檜山優に楯突いたこと、簡単には済ませないよ」
男達は平伏した。
檜山家はいわゆる極道の家系。その次期当主である、檜山優には秘密があった。それは、先天的な二重人格である。彼、もとい彼女は、人格が入れ替わる際、性別まで変わってしまう。そのことは、檜山家であれば、誰でも知っていることであるが、皮肉なことに、主人格たる彼よりも彼女の方が、檜山家当主として相応しいカリスマ性を内包していたのである。
この物語は、そんな彼と彼女が巻き起こす、不思議で奇妙な学園生活を、時に残酷に、時に優しく描くものである。
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