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ある少女の心労
ブラブラと歩いた。
急ぐ理由は何もない。
ふと気付くと、少女がひとりだけでいた。
見渡すと、ほとんどの子供は3人以上のグループになっている。
少女は、ブランコに乗っている。
足を乗せる場所が木ではなくゴムのようなものに変わったやつだ。
私は少女の隣のブランコに座った。
少女は座ったまま、うつむいているだけだった。
私は勢いよくこいだ。
風が気持ちいい。
童心に戻ったように思えた。
勢いをつけ、思いっきり身体を投げ出した。
子供の頃は、靴を飛ばしたり、どこまで遠くに飛べるか競ったものだ。
今は、そんな光景を見ることはない。
少女は私を見た。
そして、
「おとうさん、どうして…」
と、言って、忍び泣きを始めたのだ。
私は、飛び出したブランコに戻った。
少女が、泣き止むのを待った。
「おとうさん、いなくなっちゃったの…」
少女がポツリと漏らした。
「ん?おとうさんは、どうしていなくなったのかな?」
「死んじゃったって…」
この子は10才くらいだろう。
親の年齢なら30前後だろう。
(かわいそうに…)
私は、他人に同情したことは余りない。
人生、生きていれば辛いことはいくらでもあるのだ。
しかし、今は、この少女がかわいそうだと思ってしまった。
そんな私の気持ちがわかったのか、少女は自分の身の上を話してくれた。
母親はいなかった。
父親が亡くなって、施設に預けられているようだ。
そこでは友達もできたが、やはり寂しい時もあるそうだ。
夕暮れが近づいていた。
私は少女に、
「おうちに帰ろう」
と言って、少女と施設まで一緒に歩いていった。
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