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「ほら、ハルキなんか涙を流してるぞ?」
マスターは言いながら僕を指差した。
「え、あ、はい。えーと……」
モジモジしていると、
「歌、聴いてくれてありがとう。どうでしたか?」
「……夢を見ているようでした」
なんて、よく分からない感想を言った。すると彼女は微笑みながら「ありがとう」と返してくれた。
僕は思った。彼女はやはり“天使”だと。
歌声だけではなく、振る舞いや表情までもが天使を連想させる様な、慈愛に満ちた雰囲気に包まれている。
そして、人間離れしている。その全てが。
何と言うか、彼女、存在が希薄だ。
目の前に居ながら、まるでそこには居ないかの様な……どう表現すればいいのか、とにかく、存在が薄く、不鮮明だ。
幽霊、なんて事はないよな?ないよね。
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