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「ハルキ、それ」
「え?」
マスターに言われて僕は手にしていた薔薇の存在を思い出した。これを何に使うのか全く分からなかったが、今漸く分かった。
「彼女にプレゼント」
「あ、あぁ」
そういう事ね。なら自分で買いに行けばいいのに。なんて思いながら、手にした薔薇を彼女に渡した。
「これ……どうぞ」
「わたしに、ですか?」
「はい」
「ありがとう!わぁ……きれい……」
雨の都会の色彩に全く溶け込まない、深い赤色の薔薇を眺めながら、彼女はまた天使の微笑みを見せてくれた。
「ねぇ、あなたのお名前は『ハルキ』でいいの?」
「はい」
さっきから「はい」しか言ってないな僕。
「ハルキ、本当にありがとう!」
この瞬間、僕はもう卒倒するんじゃないかってくらい、視界がぼやけて頭がクラクラした。心臓の鼓動は僕史上最高に速いし、全身が僅かに震え始めた。
体が熱い。雨で濡れた体は今にも沸騰しそうだった。
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