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「さて、帰るかね。目的は達成された」
「え、あ、ちょっと」
言ってマスターは踵を返し駅の方へと歩き出してしまった。もう帰るの?もう少し話とか……
「待ってください!」
マスターの背中に向かってそう叫んだが、彼は一切歩みを止めず背中は小さくなる一方だった。
「えーと……どうしよう……」
考えてみたら、彼と一緒に帰る必要はなく、僕だけ残って彼女と話をしていても良かったのだが、僕は初対面の人と会話をするのが酷く苦手だ。
相手が“天使”ともなれば、それは人間の比じゃない。軽くパニック状態だった。
マスターの背中を見詰めながらあわあわとしていると、背後からか細い声が聞こえてきた。それは、僕の耳に入る人混みのざわざわとした騒音を貫き脳まで突き刺さった。
鮮明に。
透明に。
「ハルキ、わたしの孤独、殺してくれない?」
想定外の言葉だった。
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