『きっと銀の針のような雨が』

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雨に濡れながら怪訝な顔を向けていると、彼女はニッコリと笑いながら「なんてね」と言ってギターをケースにしまい始めた。 「ごめんね。意味不明で」 「あ、いや……」 「傘、差さないの?」 言われて僕は慌てて傘を差した。もう存分に濡れてしまった為、今更感があるが。 「……君は、傘を差さないの?」 見ると彼女の荷物はギターの入ったハードケースのみで、傘を所持している様子はない。ケースも体もずぶ濡れだ。 僕の問いに彼女は両手を広げ答える。 「これ、雨合羽なの。傘は必要ないわ」 そこで漸く気付いた。彼女は全身をすっぽりと覆う白い雨合羽を着ていた。確かにこれなら濡れても問題はない……いやいや、頭とギターはびしょびしょだよ?
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