『きっと銀の針のような雨が』

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「ギターの事はよく分からないけれど、濡れたら良くないんじゃ?」 「大丈夫よ。濡れたって、もう壊れない」 「ねぇ、君は……」 「ハルキ、ちょっと場所変えない?ここじゃ人が多くて落ち着かないわ」 確かに。と同意し、僕と彼女は場所を移す事にした。 小さな体にギターケースを背負い歩く彼女の後ろ姿は、とても可愛らしく、同時にどこか危うい雰囲気を放っていた。 繊細なガラス細工の様な。走り出したら壊れてしまいそうな。儚く、妖しく。 「雨、気持ちいいね」 ぴょんぴょん跳ねながら、踊るように、水溜まりを避けずに歩く彼女。見ると靴は履いておらず、素足だった。 本当に、不思議な人だ。
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