2人が本棚に入れています
本棚に追加
「今、せんせのアパートの前にいるの。これから行っていい?」
ん?オイオイ、そっとカーテンを開くと、確かに麗佳が、こちらを見上げて立ってる。
「随分突然だね。来る前に電話欲しかったな。」
と、僕は焦って、片手でパンツ履きながら答えた。しかもパンツ裏返しじゃん。
「そうしたら、せんせは会ってくれたの?」
『ウ~ン、逃げたな、確実に。』とは答えずに、
「取りあえず降りて行くから、そこで待ってて。」
と言って、携帯を切るとTシャツとジーンズだから二分弱で服を着て降りて行った。
「やあ。」
と、クールに言ってみたが、声がひっくり返ってしまった(アウト!)。
「ごめんね、突然。」
麗佳は矢張元気の無い様子で、似合わない位の優しい声で謝った。麗佳を部屋に上げる訳にはいかないし、もちろん居酒屋って訳にもいかないので、今後の展開についていろいろ頭の中でシミュレートしていた。こんな状況は初めてだから、どう行動したらよいものやら見当がつかなかった。取りあえずファミレスですね。僕は彼女を先導して、近所のファミレスまで肩で風切る真似をしながら歩いた。頼られるって中々いい気分だ。尤も何時もはモモの役なんだけどね…
ファミレスでは、僕はサラダとシーフードドリア、それにドリンクをつける何時ものパターン。麗佳はブルーベリーソースのかかったヨーグルトとドリンクを注文した。食事中は少し明るさ取り戻したみたいで、あの意地悪な笑顔こそ無かったけれど、会話の中では幾度か口元が微妙に笑ったような気がした。
食事を終えて、お茶を飲みながら話を始めて間もなく、麗佳の一言で、僕の気管に大量のレモンティーが注がれた。
「今夜、泊めて。」
泊めるなんて、いくら何でも、それは出来ないけど、話だけは聞いてあげなくちゃね。
「何かあったの。」
俯いたまま、考え事をしていた麗佳は、突然僕を見据えて、或いは僕を試すように言った。
「家出してきた。」
最初のコメントを投稿しよう!