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「たとえあいつに想われていなかったとしても、俺は」
次いで足を下ろして、緋姫を傍らに置く。
いかにも暇を持て余していました、という体裁を取り繕って、龍樹は視線を入口の方へ投げた。
「多分ずっと、あいつを想い続けるんだろうな」
「ごめんたっちゃん!
待たせちゃったよねっ!?」
赤色しかなかった視界に、フワリと光を纏った栗色が飛び込んできた。
自身が巻き起こす風に、軽やかに黒が揺れる。
「……何をモタモタしてたんだ。
日が沈むかと思ったぞ」
「だから、ゴメンってば!!」
「メンテに出してた拳銃を引き取りに行っただけなんだろ?
なんでこんなに時間がかかるんだ」
「担当者が席外してて、中々帰ってきてくれなくて、事務手続きに時間取られちゃって……っ!!」
息を弾ませた彼女が龍樹の前に転がりこむ。
焦りが大半を占めていた表情が、龍樹の元に着いた瞬間にフワリと和む。
それから龍樹の言葉を受けてむっと膨れ、だが龍樹が彼女の頭に手を置くと、嬉しそうに瞳が和む。
「……綾(あや)」
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