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養護施設から赤くて黒い悪魔に連れられて移った屋敷には、人気がなくて、怖い人間しかいなくて。
そこで自分は掃除人として……
国家の名を背負って人を殺す者として、ありとあらゆる技術を叩き込まれた。
元々素質が高かったのだろう。
拾われた当初5歳であったにも関わらず、龍樹はその世界を受け入れた。
自分が生き残るためにはこの道を選ぶしかないとも、理解していた。
緋姫という妖刀に魅入られてしまい、死ぬか殺すかという選択を突き付けられた当時の龍樹にとって、まだ死は選ぶには恐ろしい存在だった。
……今なら、どうなんだろう
龍樹は見るともなしに彼岸花の園を眺めながら、そんなことを思う。
時として死は生きることより安寧であると、今の龍樹は知っている。
あの時、緋姫を取らずに死を選んでいれば、自分は一人の人間として多くのモノを失うことなく死ぬことができた。
穢れを知らないまま、倫理の何一つ欠けることなく、綺麗なままで。
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