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「……もしも、今、もう一度、あの時の選択ができるならば……」
ぼんやりと、声に出して己に問う。
腕に抱えられた緋姫が、その声に耳を澄ませているような気がした。
「俺は……」
生きることは、つらいこと。
龍樹が生きる道には、何人分もの生き血が流れている。
時として死ぬことは、生きることより安らかだ。
そのことを知った上であの当時に戻ったならば、龍樹は死を選ぶかもしれない。
「……いや、無理か」
だがそんなことを思いながらも、龍樹は穏やかに笑った。
口からこぼれたのは、己の思考に否を告げる言葉。
「知ってしまったから」
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