第2章 ダンジョンに挑む前にやることがある、とカヤーマは語る

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剣の効かぬ敵ばかりいるダンジョンに剣を持っていくバカは、そこの剣士だけで十分じゃ。 何も考えずいつもの装備で、などというのは自分はアホウですと鐘や太鼓叩いて知らせて歩くのと同じじゃぞ。 ダンジョンに合わせて、敵に合わせて、状況に合わせて装備も戦法も変えるのが冒険者じゃ。 領主からのお仕着せの装備を使わなければならない兵士とは違うのが、自由な冒険者の強みじゃろうが。 千変万化のダンジョンに合わせて、冒険者も変えていく。当たり前のことじゃから、死にたくなければ頭に叩き込め。 はぁ、まったく話が進まんではないか。 いいか? 情報こそが冒険者が生き残るための一番の武器じゃ、山さえ切れる名剣より余程な。 なぜか分かるか、そこの魔法使い? ん、そうじゃ。流石に頭がいいのぉ。 端的に言えば「敵を知り己を知らば百戦危うからず」じゃな。 ではまずどうしたらいいと思う? 何? 敵の種類? それも大事じゃな、しかし、もっと重要なことがあるじゃろう? 分からんか? それはダンジョンがどこにあるかじゃ。 何だと、そんなこと分かっているじゃと? アホタレっ! 聞くがお前さん、このガルシスの街のダンジョンが何処にあるか知っとるか? ん? 東の方? それだけか? お前のようなスカポンタンは、ダンジョンに着く前に餓死するのがお似合いじゃ。 いいか、そのようなあやふやな情報は情報とは言わん。 東にどのくらい行ったところなのか、近くの目印は何か、入り口は何処にあって、どのくらいの大きさか? まだまだあるぞ。 そこに行きつくまでの道中はどうする? 飲める水場は近くにあるのか? 山賊やモンスターの隠れていそうなところは? 川など増水で渡れないとき違う道はあるのか? 行くときだけではない。ダンジョンで怪我をした場合、近くで安全にキャンプ出来る場所は確保出来るのか、それとも近くに村があるのか、その場合治療できる医者や薬師などそこにいるのか? 常に辿り着くまでの複数のルートを確保し、なおかつ何かあった場合の撤退時、安全は確保しておく。 ここまで出来て、ダンジョンのあるところまで行ける訳じゃ。 このままだとお前さん方、ダンジョンに辿り着くか心配になってきたの。 まぁいいわ、これからじっくり教えてやるわい。 ダンジョンの辿り着き方は何となく分かったか? そうか、何となく心配じゃがいいじゃろ。次、いくぞぃ。
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