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質問文のひとつに「尊敬する人物は?」という欄があって、ショウコは悩まず「ジョー・ストラマー」と書いた。
そして数日後、朝から「永澤ショウコってどいつだ!?」と教室で騒ぎ立てた男がいた。それが東海林だった。
なんでも、放課後に教室を掃除しながらボンヤリと様々な「わたしはこんなひと」を眺めていると、ショウコのシートを見付け、翌日登校してきて早々にその存在を探したかったらしい。
東海林はショウコを見付けると、肩を掴んで「おまえ、クラッシュ好きなの?」と鼻息荒く尋ねたのだった。
ショウコが気圧されつつもそうだと答えると、彼はずっと欲しがっていたオモチャを買い与えられた子供の如くニカッと笑って、「おれもなんだよ!」とショウコの肩を揺さぶった。
それからは、東海林の独壇場だった。
自己紹介から始まり、自分の好きなバンドのこと、それが周囲の誰にも理解されないこと、この年代それも女性で同じ趣味の人間に出会えたことに感動するということ、しかし音楽に年齢も性別も関係ないと思っていること、そんなことを東海林は授業開始のチャイムが鳴るまでひたすら捲し立てた。
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