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「またしゃべろうな! おまえに出会えて嬉しい!」と嬉しそうに言い残して、東海林は自席に着いた。しゃべるというよりは、自分が一方的に話し立てただけということに彼は気付いていない。
しかしながら、彼が言ったことは、ショウコも同じ思いだった。
周囲のJポップやアイドルやロックまがいの顔バンドの人気にはついていけず、自分が好きな音楽は誰も知らないし、知っていても興味を示されないから話もできなかった。母親には、そんな不良みたいな音楽を聞いているお前は悪魔だとさえ言われた。
彼の威勢には少し引き気味だったが、ショウコもやはり同じ趣味を持つ人間に出会えてよかったと思った。
後々ショウコが東海林の質問シートを覗いてみると、憧れる人物欄には「ジョン・レノン、ジョニー・ラモーン、ミック・ジョーンズ、甲本ヒロト」が上げられていた。
それから東海林は事あるごとに「クラッシュの話しようぜ!」だとか、「今度あのバンドが来日するって!」などと、ショウコと話をしたがった。
ショウコは異性として東海林を意識している訳ではないが、話しかけられるのは嬉しかったし、何より東海林が中学に上がって初めてできた友人だった。それも、同じ趣味を共有できる友人だ。
ショウコは、そういった意味合いで東海林が好きだった。
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