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橘というのは、一年生の頃にクラスで知り合った橘 美操のことである。ちなみに今も同じクラスで、偶然にもショウコの隣の席になっている。
縁なしの眼鏡に背が高く、あまり他の男子生徒と一緒にふざけるタイプではないが、陰険な雰囲気も漂わせない、静かで爽やかな男だ。様々な方面に対して理解や視野が広く頭の柔らかい男だったが、ショウコは橘があまり好きではなかった。
確かに彼は積極性の無い自分にも優しく接してくれるし、自分が好きなバンドの話も興味深そうに聞いてくれる、「いい奴」なのであるが、ショウコは橘になんとも言えない不気味さを感じていた。
もしかすると、他の生徒より大人びているところが、その不気味さなのかもしれないし、彼の落ち着いた態度を違和感と捉えてしまうのかもしれない。
しかし、愛想が悪いわけでも、一緒にいて不愉快な言動をされるわけでもないので、団体で行動するといった場面では、橘は寧ろ他の生徒より楽な存在だった。
ヒイラギは古いマイナーバンドや売れないインディーズバンドには専ら目がないし、橘は「自分の知らない世界は勉強になる」だとか言って、ドラムビートの魅力に長けたCDを漁るのが好きだ。
それ故に、ショウコは二人を「宝探し」に連れて行くのには賛成だ。
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