一億円の現実

「うちの実家、建て替えしたい。
もう床とかあっちこち
抜け落ちそうになってるし。
お風呂も狭いし、台所も使いにくいし。
宝くじ当たったらリフォームしてあげるから、
って前に冗談で云ったら、
建て替えたいって云ってたから」

「なら多めに見積もって、二千万くらい？
家電とかも買い替えないとだもんな。
この間泊まりに行ったとき、
洗濯機、酷い音がしてた」

「……だよね」

さっきの下に、「実家建て替え　二千万」。

「俺の実家もどうにかしないとだもんな。
まあ、あっちは適当でいいから……」

旦那の手が、
「実家リフォーム　一千万」と紙に書き込んだ。

「これであとは……五千万？」

「だね」

「老後の蓄えもしとかないとだもんな。
こうなってくると年金なんて、
ちゃんともらえるかわからないし」

「だね」