核を見せる

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核を見せる

涙色震えた言葉の中、 今という日常に死が近づく。 只管、繋いできた価値を握り。 無垢な残酷さに平和の脆さが、 希望的観測に限界がチラつく。 今さら綺麗事はやめにしよう。 秩序の為の犠牲、 利益の為の犠牲、 明日は我が身。 殴られ切られ肉から流れ出す血を、 生きたままくりぬかれた眼球を、 火をつけられ爛れ絶叫する声を、 そして息を止めた。 傷を伝える勇気を、 傷を見る覚悟を。 傷を受け入れる、 傷を伝える言葉を。 針のむしろにくるまれても。 捲れた皮膚から見える 充血した果肉、 ドクドクと脈打つ恐怖と 沸き上がる吐き気。 見慣れた形で、見慣れない色をしている。 まだ、慣れずにいるよ。 自分の体が止まらない悪夢のようだ。 早く楽になりたい。 そう、思うこともある。 息を潜め、事勿れに過ごせるのなら。 生きてもいたい。 この現実が余りに性悪なのだから、 牙を研ぎ澄ませるよ。 柵の中で笑い合う温もりを守れるように。
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