62人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
気怠い暑さに身を焼かれる。
拭えど、拭えど、滴り落ちる塩気を含んだ汗が、眼鏡の奥の一重瞼に入って痛い。
首に巻いたタオルで拭くが、数秒後にはまた、滴り落ちている。
灼熱の太陽が、背の高い広葉樹を照らしていた。
ゆうに2,3メートルはありそうな常緑樹が生い茂り、僕と磯野教授の行く手を困難にしていた。
僕は頭上を覆う木立の上を見上げる。
熱気で曇った眼鏡越しに見る空は、太陽の明るさで白く光って映った。
僕らは日本の南端に位置する無人の離島に探索に訪れていた。
島の名前は奥磁島。
マングローブが広がり、湿原地帯のこの離島に一般人が足を踏み入れることはない。
観光や漁をするにはアクセスが悪いことが表向きの理由だが、本来の理由は島の構造にある。
島の面積は二二・五平方メートル。
硫黄島とほぼ同じ面積だ。
もともと奥磁島は火山島なので生存に適さない。
また、度重なる火山地震により地中深くに眠る鉄鉱石が地殻変動を起こし、化学反応した鉄鉱石から特殊な磁気が生み出された。
最初のコメントを投稿しよう!