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翠と名乗った行き倒れに対し、刀が迫ってくる。翠は襲いかかる沖田の刀を、側にいた藤堂の刀を奪って受け止める。
「総司、危ないじゃないか。
アンタも私の刀を返しておくれよ。」
「怪しい人物なら斬るべきでしょう。
こんな妄言を言う人を信じられますか?」
「お前、自分で助けておいて斬るっておかしいだろう。」
沖田は相手と斬り合いながら、藤堂との会話を続ける。
「私は新撰組に害を加えるつもりはありません。それに、この時代で私たちには帰るところがない。
新撰組の隊士募集は素性は重視されないはずでしょう。
使えないと判断したら、斬ってもらって構いませんから、ここに置いてもらえませんか?」
藤堂の刀を奪い、沖田と互角に渡り合う翠は切羽詰まった表情で語る。
「入隊は私たちだけじゃあ決められないんだ。
局長や副長の判断が無いと‥。」
ドタバタという足音と供に、入り口付近に男たちが押しかける。
「何事だっ?」
沖田たちの斬り合いの音を聞き、駆けつけたのは、刀を持った永倉新八と槍を構えた原田左之助を筆頭に新撰組幹部の男たちである。
後ろには困惑した近藤勇や明らかに不機嫌な顔をした土方歳三、今にも斬りかかりそうな斎藤一などもいる。
「あれっ‥‥手間が省けちゃいましたね。」
刀を鞘に収めながら沖田がにこやかに話す。
「近藤さん、この人たちここで預かってもいいですか?」
「総司、状況が全くわからないのだが?」
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