時の歪み

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「藤高って誰だい?私の名は… 平助。藤堂平助だ。」 目の前には自身を藤堂だと称する藤高が真剣に見える刀を構えていた。 やばい…訳がわからない。 「新撰組…よくも、よくも…伊東先生を手に掛けてくれたな。」 油小路の変では藤堂たち御陵衛士は頭である伊東甲子太郎の仇討ちをしようとしていた。 その時の藤堂が自分と対峙しているかのようだ。 藤高が迷い無く私を斬ろうとしてくる。 呆気にとられてしまい、身体が動こうとしない。 「支倉さんっ、危ない?!」 すんでのところで、藤高と同じく刀を持った者が彼の攻撃から私を防いでくれた。 「助かった。済まないな。」 この人物の名は津田 桃李(ツダ トウリ)。 大学の藤高と同学年の学生で、同じ剣道部の部員である。 剣道部で一二を争う腕前の持ち主である。 「藤堂平助がボクに敵うはずがない。 次の一撃でぶっ潰してやるよ。」 津田の宣言通り、その攻撃を刀で防ぎながら藤高が道場の壁に打ち付けられる。 「津田っ?!やり過ぎだ。」 もともと藤高は津田には敵わない。 しかし、藤堂平助までも打ちのめしてしまったコイツは何者なのだろう。 「すみません。気絶させてしまいました。」 「とりあえず、別の場所に運ぼう。 手伝ってもらえるか?」 ふたりで持ち上げようと藤高に近づいた時、オレンジ色の光が再びあふれ出す。 さらにピンク色と緑色の光までもが交互に辺りを包み込む。 眩しい光に目が眩み、自分の見ている空間が波打ってその原型がわからなくなっていく。
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