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自分は普通に生きて来たと思う。
いや、どうだろう、自分と言うとてつもなくつまらない、なにか影のようなものに、実は操られていたのではないか?
つまらない男、それが自分だと思う。
それでも普通に、社会人らしく(と言ってもなにが社会人らしくなのか、未だに分からないが)、当たり障りなく生きて来た。
普通に通勤電車に乗り、普通に中小企業に入って通勤し、そして、普通に自分のマンションに帰る。自分の?
参ったね、それは女房の話だ、女房のモノ、って言う話だ。
そして、今ここでぶつぶつと言っている自分こそは、電気も点けず、森下のマンションで、ぶつぶつと過去を思い出しているのだ。
自分の中のアイディンティティは、つまらなくも非常に危うい状態になっていた。
分かるかい?危ういってことが、考えても見てくれ、34歳になる結婚していた男が危ういってことが。
そうだね、何から伝えればいいのだろうか、ふ~ん、参った。
これはまるで会社の始末書を書くぐらい大変な事になる。
とりあえず、インスタントコーヒーを作る為にお湯を沸かした。
台所は、もうすでに汚く、皿やコーヒーカップや箸の山となっていた。
ここで、一人で話さなければならない。
女房はつまり、自分、僕と別れたがっているということだ。
つまり、そう、電気も点けずに、ぶつぶつと青白い壁に、過ぎ去った過去へ、文句を言っている自分がいるのも、突然に女房、妻が離婚すると言い出したからだ。
参った、突然、妻である中川幸子が離婚したいと言った。
中川幸子、旧姓は川村幸子だ。
サチコ、僕はサチコとお見合いで出会った。
目が細い、どう考えても美人とは言えない女性だった。
その時は、そう、お見合いの時は声さえもか細く、病弱な女性なのかな~と思った。
そんな女性が、突然、僕に離婚してくれと言った。
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