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羽織った上着を首まできちんとしめて恵吾の家の門の前にいたら、恵吾と共に恵吾のおばちゃん(母親)が顔を出した。
「雫ちゃん、夜に星見に行くなんて、センチメンタルだねぇ」
「おばちゃん、ごめんね、恵吾連れ出しちゃって」
「あの公園でしょ。気を付けてね、ハイ、これ、寒いから持って行って」
そう言って渡してくれたのは、保温ポットに入っている温かいコーンスープだった。
「うわー!おばちゃん、ありがと!ホント大好き!」
手を振ってくれるおばちゃんに見送られながら、望遠鏡を担いでいる俺とポットとレジャーシート、そして寒くないようにとおばさんがこれも持たせてくれたんだろうブランケットを持った恵吾は夜の道をてくてくと歩いた。
「っさっむ!もう冬だな!」
「こんな夜に出かけようとするからだろ…」
渋々という感じだが、恵吾はいつも俺に付き合ってくれる。
嫌味言ったり小言言ったりするけれも、すごく優しくてイイ奴なんだよ。
はぁ…と、恵吾が息を吐く。
それは白い煙となって、空気中に消えて。
「うわ、眼鏡曇った」
「ばーか、何やってんだよ」
「うるさい雫、近所迷惑だぞ」
そしてまた、白い息を吐き出すのだった。
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