独りじゃない

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「起きろ」 男の声がして目を開けると、なぜか黒猫に顔をペシペシと叩かれていた。 腹に乗った猫を抱いてゆっくり起き上がり、辺りを見回しても声の主は見当たらなかった。 寝ぼけて幻聴でもきこえたかな? 猫を落とさないように小さく伸びをすると、目の前からさっきの声が聞こえた。 「許可してやるからまずは服を作ったらどうだ?」 随分上からだな……って、猫が喋った! しかも服って……なんで貫頭衣!? 「意味がわからん……」 落ち着け、落ち着くんだ。 とりあえずわかる事から考えればわかるはず。 ・猫が喋った ・なぜか貫頭衣を着てる ・ここは洞窟の中っぽい うん。わかる事が少なすぎるし全然わからん。 こういう時はあれだ。 「すまない。何が何やらさっぱりで……どういう状況かわかるだろうか?」 困った時の人(?)頼み。 「生まれる前、お前は天使に会っただろう?」 「生まれる前? っていうのはわからないけど、天使は見たと思う」 非常に眠かったせいか曖昧だけど、天使がいた事と優しい声だった事は覚えてる。 後はなんか妙な事してたくらいか? 「 俺はあいつに頼まれてお前をここに運び、お前はここで生まれた。その様子では何も聞いてないようだな」 猫は何か考え中なのか目を伏せ黙ってしまった。 天使が何か言っていた気はするけど、夢現だったから夢と一緒に忘れたのかもしれない。 聞いてないとまずい事だったんだろうか。 しばらく考えていたが記憶はとんと戻ってこなかった。 それでも何とか思い出そうと唸っていたら、猫が顔を上げて再び口を開いた。 「ある程度は俺が知っている。全部説明すると長くなるから少しずつ教えてやる」 うん。きっと説明が長すぎて寝たんだろう。 重要な事ならもう一度起こしてくれても良さそうなのに、天使が優しいのは声だけか! それに比べてこの猫さんは頼もしい。 一緒にいるとなんか落ち着くしなぁ……。 猫さんを眺めていたら何だかふわふわしてきた。 かなり寝たはずなのにまだ眠いんだろうか。 「俺はお前と共にあるモノ。呼ぶ名がないと不便だろう。お前の記憶から違和感のない名……俺の事はマオと呼べ」 猫さん……マオの目がとても優しかった。
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