0人が本棚に入れています
本棚に追加
「起きろ」
男の声がして目を開けると、なぜか黒猫に顔をペシペシと叩かれていた。
腹に乗った猫を抱いてゆっくり起き上がり、辺りを見回しても声の主は見当たらなかった。
寝ぼけて幻聴でもきこえたかな?
猫を落とさないように小さく伸びをすると、目の前からさっきの声が聞こえた。
「許可してやるからまずは服を作ったらどうだ?」
随分上からだな……って、猫が喋った!
しかも服って……なんで貫頭衣!?
「意味がわからん……」
落ち着け、落ち着くんだ。
とりあえずわかる事から考えればわかるはず。
・猫が喋った
・なぜか貫頭衣を着てる
・ここは洞窟の中っぽい
うん。わかる事が少なすぎるし全然わからん。
こういう時はあれだ。
「すまない。何が何やらさっぱりで……どういう状況かわかるだろうか?」
困った時の人(?)頼み。
「生まれる前、お前は天使に会っただろう?」
「生まれる前? っていうのはわからないけど、天使は見たと思う」
非常に眠かったせいか曖昧だけど、天使がいた事と優しい声だった事は覚えてる。
後はなんか妙な事してたくらいか?
「 俺はあいつに頼まれてお前をここに運び、お前はここで生まれた。その様子では何も聞いてないようだな」
猫は何か考え中なのか目を伏せ黙ってしまった。
天使が何か言っていた気はするけど、夢現だったから夢と一緒に忘れたのかもしれない。
聞いてないとまずい事だったんだろうか。
しばらく考えていたが記憶はとんと戻ってこなかった。
それでも何とか思い出そうと唸っていたら、猫が顔を上げて再び口を開いた。
「ある程度は俺が知っている。全部説明すると長くなるから少しずつ教えてやる」
うん。きっと説明が長すぎて寝たんだろう。
重要な事ならもう一度起こしてくれても良さそうなのに、天使が優しいのは声だけか!
それに比べてこの猫さんは頼もしい。
一緒にいるとなんか落ち着くしなぁ……。
猫さんを眺めていたら何だかふわふわしてきた。
かなり寝たはずなのにまだ眠いんだろうか。
「俺はお前と共にあるモノ。呼ぶ名がないと不便だろう。お前の記憶から違和感のない名……俺の事はマオと呼べ」
猫さん……マオの目がとても優しかった。
最初のコメントを投稿しよう!