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「愛弓、せっかくの申し出だから撮ってもらうか?」
「あ、うん」
私の肩に何かが触れる。達哉の手だ。私の肩を抱き、ゆっくりと歩きだした。グローブとジャケット越しだけど、達哉に触れられた肩が熱い。伝わるなにか。どきどきする。そして切なくなる。もう拷問だと思う。私に気がないなら肩なんて抱かなければいいのに。
ご主人はこのあたりに立って、と私たちを誘導する。振り返れば空にはオーロラ。カーテン状にゆらゆら揺れる。
「おい。そのまま動くなよ。露出が長いから動いたらブレるし」
「彼女たちの受け売り? そう言われたんでしょ」
「言われたけどその前に常識だろうが。ほら、前向けよ、前」
達哉はさらに私の肩を強く抱きよせた。
「愛弓、頭を俺の肩に預けろよ。そのまんま突っ立ってたんじゃぎこちねえし」
「わ、分かったわよ」
そっと達哉に預ける。でもお互いにマスクをつけたままだ。こんな記念写真、誰が誰だか分からないだろうに。ただ達哉の肩に寄り添うだけなのに、時間がものすごく長く感じる。しばらくしてご主人が腕を上げて私は姿勢を戻した。
私が別の場所に移動しようとすると、再び達哉は私の肩をがっちりとつかんだ。振り向けば目の前に奴の顔。瞬時に心臓が跳ねる。
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