§5 いきなりプロポーズ? いきなりキス!

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 どきどき、バクバク。息を止めていたことに気づいて唇を離そうとするけど、達哉の強い腕に阻まれて身動きが取れない。鼻で空気を吸い込む。達哉のミントの匂いでさらにくらくらとした。どうしてキスなんかするの? 演技だからってそこまでしなくていい。  熱い……寒い筈なのに、どんどん体の芯が熱くなっていく。  しばらくして、達哉は腕を緩めた。それと同時に唇は離れた。 「た、達哉?」 「ごちそうさま」  達哉はにやにやと笑っていた。もしかしてからかった? 「や、演技じゃなくて遊びなの?」 「なんだよ。間接キスも本当のキスも大して変わんねえだろ」 「だって」 「なに、意識してんだよ。いい大人のくせに。キスぐらいで慌てるなよ」 「ひどい……」  私はうつむいた。ひどい、肩を抱いたり手をつなぐぐらいなら気持ちがなくても許せるけど、キスは違う。遊びでするものじゃない。鈴木夫妻が私たちのところに来て、見せつけてくれるわね、とか、若いもんにはやられた、とか話しかけてくれたけど、私はみじめな気持でいっぱいでずっと下を向いていた。コイツ恥ずかしがりやで、とかなんとか達哉はごまかしていた。
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