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色々、驚いた。
柘榴さんは常に無音で裏方の黒子みたいにミスディレクションしてんだよ。
最初は上の空だったから違和感に気付かなかった。
それと外見。
確かに男なのに一瞬女に見えたりする、格好いいのに綺麗で美しいとも言える人。
黒い浴衣にはよく分かんない赤い花が咲いてて、月の光に照らされて神秘的に輝く柘榴さんの姿に、俺は素直に見惚れた。
『遂願、名はなんと言う?俺は柘榴だ』
『…雨守…清…』
澄んだ低い声に聞き惚れながら、どうにか紡いだ自分の名前はどこか他人のもののように感じた。
『その服は此処では目立つ。之に着替えるといい』
差し出された水色の浴衣を見て、正直コスプレかと思った。今時祭りとその手の職の人以外じゃ誰も着てないから、つか着方わかんないしここで着替えるの?
え、外よ?
ちょっと一悶着あったけど浴衣(と言ったら怒られた。正直違いとか分かんない)では無く着物に着替えた俺の姿を見て、柘榴さんは何やら満足そうに頷くと俺の手を引き歩き出した。
俺はそれを見てーーえ?触ってる。柘榴さんが誰かに触ってる?!と失礼にも驚いた。
神秘的過ぎて、俺は柘榴さんが誰かに触れるのが想像出来なかったんだ。
俺からしたら、柘榴さんって常に絵画の人物を眺めてるのと感じが似てる。絵画の人物が動いて自分に触るとか想像出来ないでしょ。
一人驚く俺の心を置いて柘榴さんは迷わず進む。
月は出てるけどとても暗いのに凄いなぁ。俺の目には黒ともっと黒の違いしか分からない。
あれ?
でもさっき着物の色とか見えたぞ?この暗さで着替えたし。あれ?
……まぁいいか。
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