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『此処が何処か分かるか?遂願』
『いえ全く』
ほんの数分前にここが知らない場所だと認識した俺に、答えなんて持ち合わせている筈もなく俺はスッパリ答えた。
しかし、柘榴さんはここがどこだか当てるだなんて高等技術を望んでいたんだろうか?
馬鹿正直に答えたけど、胸を張ってヘタレだと宣言できる俺は不安になって来たぞ…。
『なら、此処が遂願の知る場所では無いと分かるか?』
『それならーー分かります。心はまだ付いて来ないけど、理解はしました』
少し視線を上に向けて答える俺を見て、柘榴さんはまた何やら頷いた。
だけど俺はーー良かった。柘榴さんが鬼畜な思考回路して無くって。と安心していた。
『此処は遂願のいた時代より百六十年程前、新撰組や坂本龍馬等がいた幕末だ』
満天の星空が有り得ない事を言う柘榴さんの背後で輝いている。
俺はそれ聞いてーー何それ凄い。つか柘榴さんって何者?未来人?宇宙人?俺タイムスリップしちゃったの?でも幕末ってまだ刀あって治安悪くなかった?俺死んじゃうやん!?
『…あ~…俺って帰れるの…?』
死という考えに行き着いて俺の口は情けなくもそう聞いていた。柘榴さんは首を振りそれを見た俺は落胆したけどーー
『違うな。それは今の遂願に重要ではない。現代では希薄になってしまったものが此処では比較的簡単に手に入る。だが早々に死ぬのが怖いのだろう?』
怖い…?
それは俺の心の核心を突く言葉だった。
そっか。現代の世界では手に入れられないと思っていたものが、この時代では手に入る。それを手にしないまま死ぬのが、俺は怖いのか。
一瞬で不安に呑まれた俺に柘榴さんは薄く微笑んだ。安心しろ、そう言われているようだった。
柘榴さんって不思議な人だなぁ。もしかしてエスパーなんだろうか?今迄の心の声聞こえてたりするのかな?やっべぇ言った言葉失礼な事しか覚えてない。
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