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雨守清が再三内心でヘタレを発揮していた傍ら、月光が降り注ぐ屋根の上でそれを見ていた二つの蛇の目があった。
風に靡く燃える様な真っ赤な髪を、赤に映える緑のバンダナで留め、バンダナ同様緑の着物には今にも動き出しそうな立派で鮮やかな朱色の鯉が泳ぐ。
屋根の上に立つ影は、門近くで言葉を交わしていた雨守と小奇麗な色男が数分後には門の奥に入って行くのを見届けた。
「へぇー、案外やりますなぁ。殺したろ思ったんスけどねぇ。之じゃ手出し出来まへんわ」
月の光を反射して金に輝く目を細める影は、やれやれと肩を竦める。
風が一瞬強く吹いた次の瞬間には、忽然と屋根の上から影は消えていた。
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