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つまり私はお腹が弱い。
油断するとすぐにお腹がゴロゴロになる。
体はいたって丈夫やし、食欲もあるのに中学に入る前くらいから具合が悪くなる日が増えた。
病院へ行っても、おばあちゃんが煎じてくれた漢方薬飲んでもあまりよくならない。
結局「お腹を冷やさないようにするしかないですね」というお医者の言葉で、私の腹巻人生が始まった。
最初はものすごくショックだった。
頑張って勉強して合格した憧れの薫風中学の制服が着られるのを喜んでたのに、その制服の下にカイロいっぱいつけた腹巻しなあかんなんて……。
カッコ悪すぎる……。
でも、憂鬱そうなのは私だけで、周りの反応は妙に明るかった。
最初にカイロ全部入れた「らら巻」姿を見たおかーさんは、目を輝かせてこう言った。
「ガンマンみたいでカッコええわぁ!」
あれには軽くめまいがした。
ガンマンて……。あの人らが腰に巻いてるんは鉄砲用のベルトやろ。
これのどこがカッコええんよ。
最初は子供心に嫌で嫌で仕方がなかった。
でも、らら巻をしたらお腹の調子はいいのは確かで、手放すのも不安になる。
学校でも意外と受けがよく、、実物を目にしたクラスメートに「らら巻いうのん? かわいー」と言われたのもほっとした。
中学3年間で、腹巻をしている自分という存在は自他ともに認められていった。
高校から入ってきたあやちゃんに「腹巻ガール」を略して「腹ガール」と命名されるまでは、私のニックネームはずっと「らら巻」だったくらいくらい、私にはなくてはならない存在では、ある。
それは分かってる。
それと、乙女心が微妙にじくじくするのは別の話。
みんなの前では「腹ガール」っていわれても、笑ってられる。
嘆き悲しむことではないのも承知している。
それでも、やっぱり心がじくじくする。
私、男の子とつきあったりとか……できるんかな。
こんな腹ガールにその資格、あるんかな……。
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