プロローグ

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わかってる、 私が平安顔の女やってことは。 ららなんていう顔と違うことくらい、自分が一番よーく、わかってる。 けど、お母さん曰く「生まれてきたあんたの顔見た瞬間、きらっとひらめいたんよね!」という、大切? な名前だ、文句は言えない。 ちなみに、お母さんがきらっとひらめいたという「らら」という名前、お父さんはせめて漢字にしたかったらしい。 しかし、お父さんが提案した漢字を、お母さんは速攻却下したらしい。 「うちの中小路(なかこうじ)いう苗字にそんな漢字つけたら、学校のテストで名前書くとき苦労するから、ダメ!」 私が小学生の頃、その時のことをお父さんにぼやかれたことがある。 「お父さんは、蘭々って書いて、らら、がよかったんやけどなー」 お父さんの寂しい気持ちもわかるけど、当時の私は内心、「蘭々」で「らら」と読むのも微妙、と思ったのだった。 だって、初対面で「ちゅうしょうろらんらん」なんて呼ばれたら目もあてられない。 イタイ間違いされるよりは、平仮名のほうがまだマシだ。 なんだかんだ言っても16年以上自分の身についた名前だから、人ごみで大声で呼ばれると今でも恥ずかしいとはいえ、愛着はちゃんとある。 それに……。 こまちゃんは相変わらず私の腰につかまりながら、私にふざけた声でいう。 「そしたら、学校での呼び名、ここでいうてもええのん?」 「あかんて! それはやめて!!」 こまちゃんの言葉に、全力で答える私。 アレをここでいうのは、やめて!! それやったらどんだけ無駄にキラキラでも、本名で呼ばれるほうがまだましだ。 そう、屈辱的なニックネーム。 通っている薫風(くんぷう)女子高等学校2年A組で、私こと中小路ららはこう呼ばれている。 ――腹ガール。 ……なんやそれ。
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