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「……彰…いるのか?」
「ああ、いつものとこでパン食べてる。」
俊は親指を立てて後ろを指さした。
「そうか。」
そう答えて、扉の外へ出た。
「あっ!俊!」
俺は振り向いて閉まりかけの扉に向かって声をかけた。
俺の声に扉が動きを止める。
俊は顔だけ出して「なんだよ?」って聞いた。
「明日、母さんのとこに行くだろ?」
「当たり前だろ。」
俺の問いかけにはっきりと答えた。
「今日は涼も行くから置いていかないでよ!って朝言ってたぜ。」
「ああ、わかったよ。」
俊は返事をすると扉を閉めた。
俺と俊には2個下の弟がいる。
そいつの名前が涼(リョウ)。
そして俺たちの母さんは生まれつき心臓が弱いらしく定期的に入院して心臓の検査をしている。
半年に1回、一週間程度。
今、ちょうどその時期。
俺は"いつものとこ"に向かう。
そこにたどり着くと彰は手に持ってるパンにかぶりつきながら
「おっ、今度は祥か。」
って、パンのせいでくぐもった声で言った。
「それ何パン?」
俺は彰の横に腰を下ろしながら聞いた。
「クリームパン」
「クリームかあ……」
俺の残念そうな声音に彰は横に置いてある紙袋を手にし俺に渡した。
「ほらよ。」
俺は紙袋を開けて中身を確認する。
そこには俺の好物。
「さっすが彰~!俺の好物よくわかってるな。くれるのか?」
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