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神奈川県某所にて、河川敷で女子高生の顔面を引き裂かれた遺体が発見された。周囲は真っ赤な血で彩られ、殺害されたのが、女子高生であると分かったのも、彼女が、女子用制服を着用していたためであった。そうでなければ、こんな、顔面を縦に引き裂かれたものを、男性であるか、女性であるかなど、そう見分けが付くわけがない。
「鬼塚刑事、どうでしょうかね、犯人の目星は付きましたかい?」
新米刑事の藤田幸一は、先輩である鬼塚寛人に意見を求めた。
「アホか、俺達は今来たんだぞ。分かるかよ」
「怒らないで下さい。ただ、犯人は、この女子高生に強い恨みを抱いているか、あるいは、ただのイカれ野郎の犯行か、いずれでしょうね」
「ああ、しかし、酷い光景だ。犯人が同じ人間とは思えないね」
「鬼塚さんも人間じゃないんじゃないですか?」
「はぁ?」
二人の間に乾いた空気が流れた。
一方、優は教室にて、転校生の挨拶兼自己紹介をしていた。その姿はすでに、元の少年の姿に戻っていた。
「あの、あの、僕は今日から、皆さんと一緒にお勉強させて頂く、檜山優と申します。よろしくお願いします」
何回も練習した台詞である。しかし、本番になると、やはり声は震えるし、頭の中は真っ白になる。
「檜山君、よろしくね」
一人の女子生徒が立ち上がって、優を見て、ニコッと微笑んだ。彼女は、女子にしてはやや長身で、真っ赤な髪の毛を後ろで一本に結んだツインテールをしていた。胸は発育途中と言えど、すでに完成したかのように大きく、つり目がちで、優の第一印象では、気が強そうの一言で説明がつく気がした。
「あたしは、神田棗、よろしくね」
これだけで、彼女がこのクラスの盛り上げ役、ムードメーカーであると分かる。快活で健康美溢れる棗の姿に、優はしばらく、うっとりとしてしまっていた。
自己紹介が終わると、担任の黒沢和人が簡単な事務連絡をして、そのまま教室を後にした。一時間目の授業が始まるまでは、多少の自由時間が存在している。神田棗はその時間を、転校生である、優に使うことにした。
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