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「どうも人柱を助けたいみたいなんだ、彼。よっぽど美人だったんだろうな、彼女。もしくは相当、艶っぽかったか。助けた暁には思う存分、色々と拝みたいもんだねぇ」
「人柱は二ついるのだろう? 助けたいのは一つだけ?」
「ああ、片方だけ。実は、もう一方の人柱は俺の相棒なんだ」
橋姫が会話中の何かに反応して、もう一度不服そうな顔をする。
「やっぱり、上の仕事じゃあないか。何が企まれているのかは知らないが、単純な救出劇じゃあなさそうだねぇ。全く、どっちが本命なんだかわかったもんじゃあない」
「まぁ、色々と義理があるんだ。ついでに報酬も格段にいい」
男は敢えて、どちらの報酬なのかは口にしない。
魑魅魍魎が跋扈する時代、身を守る術を持たぬ者或いは集団は、人身御供を差し出すことにより命乞いをした。今回の件で言えば、水神に対する生贄である。弱き者たちを脅かし続けた異形の為に、何人もの小さな子どもや娘たちが犠牲になったのだろう。
錫杖を持っている者は僧か修験者だという常識からか、法力、法術を必要とする異形退治を依頼されることが多い。
又、始めから、それらの行為を生業とする輩もいる。
古惚けた錫杖を手にした男は、元々仏門に属していた。育ての親に因んで、蓮という名を持っている。彼が育ったのは寺社であった。長じて、鍜治職人に弟子入りして技術を身につけ、僧とはならずに職人となった。
だが、出生の因縁によって、償いを余儀なくされる状況に陥り、仏門に下ることになる。
現在は諸事情により乖離しており、諸国を修行と称しては流離っている。
信条で伝を辿って依頼される仕事は生活の為に断らない。
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