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一瞬、外の光が暗くなったが、また、ヴィクトリアのブロンドの髪を、黄金に輝かせた。
太陽を彼女は、眩しそうに目を細めて見た。
下で大人しくしていたミハエルが、その時、一回だけ吠えた。
「ランチ!遅いわね」
彼女はそう言って、急に静かになった。
なんか、よく分からない女の子!
いや、女性だ。
「君の犬が、吠えたね」
僕は、なんとかこの静けさを打破すべく、話しかけた。
「そうね、もう直ぐ雨が降るのよ!ミハエルや狼は、よく見えるのよ!まるでソラリーゼーションのようにね」
「えっ?」
僕は、またも目を丸くして彼女を見つめてしまった。
外を見ている彼女が、ふいに僕の瞳を覗き込む。
そして、その時、店長自らが、料理を運んできた。
案の定!と言うべきだろうか?
ヴィクトリアの言った通り、雨がシトシトと降ってきた。
僕は、今、屋敷のソファーに座って暖炉の小さな炎を見ていた。
彼女は、本家の屋敷にいる。
レストラン「ドラクル」から屋敷までの道のりの事を、ちょっとだけ思い出す。
「掃除しなくっちゃ、ケイは、今日!暇なの?」
「なんで?」
「もし暇だったら、手伝ってもらいたいの」
彼女は風?に掻き上げられるブロンドの髪を押えて、僕の方を向いた。
シギショアラの町並みが、彼女一人の存在により輝きだしたかのように、明るくなって来た。
彼女を見ていると、つい、なんでもその通り、言う事をきいてみたくなる。
「さあ、どうかな」
「何処か、行くの?」
「ああ」
「きっと、雨が降るわ」
「君が呼ぶのかい?」
僕はヴィクトリアをカラかってみた。
「呼ぼうと思えば、呼べるけど」
彼女のエメラルドグリーンの瞳は、怖いほど光った。
その時、ミハエルが僕の処にすり寄ってくる。
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