第1章

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400年も前の城で、僕は彼女を待っている。 そして、ヴィクトリアは魔性の瞳を妖しく光らせながら、きっと僕を挑発するはずだ。 大学を卒業して、今度は大学院まで行こうと、このトランシルヴァニアの古城で考えている。 大学卒論のテーマに伝説と地域性を取り入れたのは、冴えていると思っていた。 が、あれから、もう一年になる。 三月の卒業式に一回帰国した。 帰る日の夜に、ヴィクトリアはドラゴンと狼の紋章のペンダントを僕に渡し 熱いディープキスを交した。 グリーンの瞳と天然のブロンドの髪を持つ、ヨーロッパ系の美女は僕に言う。 「また、戻るわ、きっとね」 と。 ヴィクトリアは僕に数々の奇妙な伝説や呪術を教えてくれた。 妹の里穂が悪性の白血病で入院したのも、これに深入りし過ぎた報いなのだろうか? トランシルヴァニアは呪われているか? 兎に角!僕は一人になりたかった、と、今でも思う。 なぜ?ルーマニアの片田舎のトランシルヴァニアに来たのか? と、たまに自問自答したくなる時がある。 ある昼下がりに!だ。 そして、この片田舎は、日本人も、韓国人も、中国人も、その他の東洋人も、みんな一緒に考えているから、今でも奇異の対象物として見られている。 最初の一週間は、バートリー家と言う地主の古い屋敷で自炊をし続けていたが、元来が面倒臭がり屋の性格だから、くじけてしまい、昼は今いる「ドラクル」と言うレストランで地元料理とやらを食べていた。 夜はバーになるらしいが、以前に地元の若者達にからかわれてからは、夜は足を運んではいない。 「ドラクル」の店長も最初は、僕を煙たがっていたが、もう一ヶ月近くもランチを食べにくる僕に、やっと最近、挨拶をするようになった。 一ヶ月、そう最初の一ヶ月は、そんな事や 水道、ガス、電気料金の名義変更?で色々とその町の役場に行って手続きづくめだった。
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