第1章

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街には街の匂いってモノがある。 フランスなら、裏路地に入れば入るほど、下水と腐った肉の臭い、と、中世からの淫売たちが付けていた安い香水が付着しているような、そんな匂いだ。 そして、トランシルヴァニアは、さてさて、どうだろうか? 湿気が多い! 草木の匂い? そして、鉄の匂い? 鉄=血のニオイ! 鉄=血液! トランシルヴァニアの土地、 その土地には、夥(おびただ)しい戦乱の血が流され、混じっている筈だ。 日本だって、同じだ。 戦国時代の古都周辺は、名も無き若者や兵士の血が流れ、それがこの大地に浸透するのだ。 土地はそして、磁場を持ち! 地脈(血脈)となって次の世代に、無言の問いかけをする。 「ハロー?現代の人々よ!そして、前世から繋がる人々よ!人生はどうだい?」と。 城砦都市シギショアラの町の、石畳の路地も所々が変色している。 変色している所が、まるで誰かの顔のようにも見えるが、いつもの気のせいだろう。 血液はその石畳の中にも吸い込まれ、昔の人々の魂は地縛する。 そう思っては見るが、まだ、ピンとはこない。 カメラ屋に行ったが、まだプリントは出来ない?らしい。 日本人は煙たがられている。 ここはトランシルヴァニアの片田舎。 シギショアラの町にはよそ者は、あまり長期滞在はしない。 ましてや、ドラキュラブームも、コッポラ監督の映画以来、映画製作も途絶えていた。 ネットでプリンターを購入した方が早いかもしれない。 いや、絶対に早いだろう。 「いまさら、ドラキュラかい?」 東京都目黒の厚生病院研修生の我が友!工藤はよく言っていた。 吸血鬼伝説は、今の時代は、もう受付はしないのだろう。 実際!僕も、その意見には合意していた。 日本では吸血鬼の伝説は、どこの地域にもあまり、いや、ほとんど見当たらない。 それよりも河童伝説や、鬼伝説の方が有名だから、西洋の吸血鬼など、なんの興味があろうか?
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