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「ミハエル、待って!」
ハスキーボイス?の女性の声が廊下から聞こえ、その次にこの部屋に入ってきた。
「ごめんなさい、三ヶ月振りだから、この子、喜んじゃって」
ブロンドの美女は、そう言って僕を見つめた。
「日本人なんですって?」
彼女はそう言うと握手を求めた。
乗馬スタイルで決めた彼女は、その白い手を僕に差し伸べる。
「ヴィクトリア・バートリーよ!宜しく」
彼女の瞳は凄いグリーンだった。
「藤崎恵(ふじさきけい)です」
「フジサキ・ケイ?」
彼女は覚えずらそうだったので
「ケイでイイです」
と言った。
「私のことはヴィクトリアって呼んで、ここの持ち主なの」
そう彼女は言ったので、僕は一瞬!驚いた顔になった。
どう見ても20代の前半って感じだからだ。
いや、それよりも、僕と同じではないのだろうか?
それほど、若く見えたからだ。
「ミハエル、駄目よ!」
僕が驚いている表情の時、さっき食べ掛けていたスープをシェパードが食べ始めていたからだ。
さっきまで暖炉に火を起こしていたから、床にスープを置いていたのだ。
運が悪い!が、仕方が無い。
「ごめんなさいね」
彼女はそう謝って、シェパードを叱っていた。
グリーンの瞳が妙に印象的だ。
僕は、ただ、呆然と彼女とシェパードを見続けていた。
レストラン「ドラクル」の店長は、ヴィクトリアを見るなり恐縮していた。
そして、いつもは常連さんだけしか通さないニ階の部屋にまで案内してくれた。
「元気そうでバートリー様」
店長は満面の笑みを浮かべて、そう言う。
「そうね、相変わらずよ」
彼女はそう話すと、優雅に店長の横を通り過ぎ、一番見晴らしの良い窓際の席に、当然のように座った。
「こっちに来たら?」
僕は、いつもとは違うランチタイムに戸惑っている。
「相変わらず、犬は入れないのね?」
「昔からの言い伝えがありますから」
「また、吸血鬼伝説のこと?」
ヴィクトリアが挑発する態度で店長を見つめると、店長はいそいそと1階に降りていった。
2階はまるで貸し切り状態になり、僕は緊張しながら彼女の横に座る。
「向い合わないのね?」
ヴィクトリアは外の景色を見ながらそう言う。
「対面だとあがっちゃうから」
「シャイなの?」
シャイなの?
シャイは僕の妹のリホにこそ相応しい言葉。
リホは今、どうしていることか?
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