◆12◆ 終わりのハジマリ

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   「いいえ。先生でいいのですが、私はこの土地で死ぬのが嫌なんです。」 「そうですか・・・。あちらの先生には私からきちんと話しを通します。何かありましたら直ぐに連絡を下さい。」 「解りました。お世話になりました。」  主治医にお礼を告げて診察室を出る。  仕事を辞めて、マンションを引き払い、病院を地方に定めて居なくなる準備を整えた。 「駅までお願いします。」  独りの病魔との生活が始まる。  駅に着き最寄りの駅まで揺られる。その後バスに揺られ小さな町に着いた。  トランクと小さな手提げしか無い。  直ぐに病院へと向かう。 「こんにちは。」 「こんにちは。保険証をお願いします。」 「はい。これもお願いします。」  受け付けに主治医の手紙を差し出す。 「お預かりします。すぐお呼びしますからかけてお待ち下さい。」  小さな待合室のソファーに腰掛ける。保健室のような病院の佇まいに少し緊張がほぐれた。 「若狭さん。どうぞ。」 「はい。」  診察室も昔ながらの雰囲気だった。 「緩和ケアだね。」 「はい。宜しくお願いします。」   
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