◇9◇ 絵画コンクール

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     マスターは、手を焼いていた。 「今は、あの子を育てたいの。」 「そうか。顔色が悪いな、具合が悪いのか?」 「残業続きで寝不足なの。頭痛薬がないとダメなの。」 「無理しないで仕事しろよ。」 「そう出来たらいいんだけれどね。長年の習慣は、直せないわ。」 「確かにな。」  そう答えてグラスを空けた。 「今日は、大人しく帰る。」 「またな。」  姪を見送る。 「はぁ・・・・・・もう、春ね。」  空気は澄んでいたが柔らかだった。 「月依さん。」 「!!」  訊き覚えのある声に背筋が凍る。 「奇遇だね。」 「千明社長・・・。」 「あの件は、どうなっているかな?」  高級車の中から声がして身動きが取れない。 「頼むよ。もうすぐコンクールだね、終わったら話しておくれよ。」 「・・・・・・はい。」 「では、またね。」  車が走り去る。 「頭、痛い。」  痛む頭を押さえる。 「月依のやつスマホ忘れてる。商売道具だろう。まだ居るか?」  バイブが鳴っていて忘れ物に気が付いた。 「客が居なくて良かった。」   
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