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一哉くんが再びキスを落としてくる。遊びより真剣な大人のキスだ。まるで一哉くんの存在を私の唇を通して私の内側に刻むような、濃密で深い。頭の芯がしびれて、理性がほどかれていく。
一哉くんのリードに任せたまま体を開けば開くほど、胸が切なくなった。意識が何度も飛びそうになるのに、それを手放したら二度と会えないような一片の哀しみがつきまとう。それを癒してあげたくて、私の体で包んで満たしてあげたいと傲慢にも思うのに、快楽の波に翻弄されて見えなくなってしまう。
今度こそは、私の全てで抱きしめてあげたい。そんな気持ちが湧いてきて、もっともっとキスをねだるように一哉くんのシャツを握りしめる。パジャマ代わりのビッグサイズのシャツの下で、一哉くんの冷んやりとした指先が私の肌を滑る。触れるか触れないかの絶妙な刺激に、どんどん感覚が鋭くなっていく。指先がおねだりする子どものような欲情を秘めて蠢くのに合わせて、火照り始めていた体の奥が卑猥な予感にうち震えた。
月はまだ明るく、夜はまだ浅い。
「一哉くんって、本当に、ほんとーに18歳?」
「うん」
冷蔵庫から出したビールを手渡しながら、聞いてみる。どうしてもセックスの仕方からして18歳に思えない。
普通の女性並みには恋愛して男の人とベッドを共にしてきたつもりだけれど、今日もまたリードできなかった。若さの勢いで立て続けにセックスしようとする一哉くんをなんとか説得してなだめたものの、本当にいろんな意味でかたなしだった。
一哉くんはビールをぐだぐだと飲みながら、ベッドにうつ伏せになってスコアに何かを書きこんでいる。華奢な体つきに見えて、実は鍛えているのか、美しい線を描くように筋肉がついている。肩がかすかに上下するしなやかな動きと滑らかな肌質は、どこか色っぽく、目を逸らせない。ビールを口にしながらラグの上に立ち尽くして見つめていると、一哉くんが口の端をわずかにあげていたずらっ子のような笑みを浮かべた。
「惚れちゃった?」
「そ、そんなわけないでしょ」
彼女がいるくせに。そう言おうとして、言葉が出てこない。
「じょーだん」
一哉くんは軽く笑いながらいなす。完全に一哉くんに振り回されている。どうしようもなく意識してしまう自分に情けなくて、ビールをあおる。
「ペース早すぎ。明日仕事でしょ?」
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