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見知らぬ部屋と見知らぬ少年
体中が痛む。
眩しい。
べたべたして気持ち悪い。
「朝……?」
のろのろと腕で瞼の裏まで届く明るさに蓋をしようとする。その動きだけで、こめかみに走った痛みに顔をしかめた。
「ったた……」
完全に二日酔いの痛みだ。刺激しないように目を閉じたままゆっくり体を起こして、そっと目を開ける。
私の部屋のものにしては、やたら白いカーテンが風に揺れている。
打ちっぱなしのコンクリートの壁。クロスが貼られてない。ステンレス製らしい本棚。白さが目立つ家電。起きればすぐにニュースをつけるテレビ、がない。
私の部屋にはありえないはずのキーボード。に、ギター。床に散らばったスコアらしい紙の束。
「どこよ?」
ライブハウスでも朦朧と思った疑問が口をついた時、背後から自分じゃない呻き声が届いた。ぱっと脇を向こうとして頭の奥に金槌を打ち付けられたような痛みが走る。
「っつぅ……」
「あー……おはよ……」
頭を抱えてうずくまった私の隣から、シーツが擦れる音と掠れた男の声がした。ゆっくり顔をあげると、上半身を起こした人が大きく伸びをしている。
ものすごくキレイな顔をした、自分よりは年下らしい若い男がそこにいた。
銀色の無造作なマッシュベースの髪がカーテンの向こうから差しこむ光に柔らかくとけている。
肩から腕にかけて描かれた、腕を巻きこむように大きくのたうつ蛇のタトゥーが艶かしい。
「え? ええっ?!」
「……なんでって?」
一気に目が覚めた。状況が飲みこめない。
「見りゃ分かるっしょ」
説明すら面倒くさげに、その人はスマホを手にするとベッドから降りてキッチンへと向かう。そのしなやかな体が一糸もまとっていないことに、頭の中が混乱している。
いや、まさか。おそるおそる自分の体を見下ろし、言葉を失った。下着を身につけてない。しかも明らかにキスマークらしき赤い痣が体に散っている。いつ服を脱いだのか、いつこの部屋にお邪魔したのか、一切記憶がない。
呆然とした時、キッチンの方でガラスの鳴る音や水を出す音がして、その人は素っ裸で奥の部屋へと消えていった。やがて水を勢いよく出す音がして、その人はバスタオルを腰に巻いた状態で戻ってくる。
思わずシーツを胸元までひきあげた。顔なんてとてもじゃないけれど直視できない。
「とりあえず風呂入れば?」
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