第1章

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 宮殿は非常に広い。 周囲を二重の堀で囲まれ、城壁も見上げるばかり。 外を一周するのも随分難儀する程である。 建立は三百年前で、当時の陸戦はもちろん、現代の地上戦でも難攻不落である。  ちなみにシーラスは、この日もオートモービルで宮殿に乗り付けている。 デール門という、いわば通用門から入り、しばらく走った後で、最近新設された駐車場に停める。 本殿はそこから歩いて五分ぐらいのところに、荘厳な姿がある。 白と淡い青を基調として、随所に金を施した巨大な建造物だ。 左右に翼を広げたような姿から、白鳥宮殿と呼ばれる。 春先で周囲の庭園には花がちらほら咲き始め、冬枯れに少し潜めていた絢爛豪華な様子をまさに蘇らせようとしていた。  宮殿内もまさに豪華絢爛というのがふさわしい。 内部もやはり大理石による白が基本だが、金の装飾や彫刻が一際多い。 廊下や階段一つとっても、何人並んで通れるかわからないほど広い。 部屋数は五十五、勤務する人数は二千人程度である。  シーラスは通用口から入り、裏廊下から三階まで上がる。 事務方用の謁見の間まで来て、隣の控え室に入り、しばらく待っていると、迎えが来て謁見の間に入る。
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