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「ところで、アロハは何の魔術が使えるの?」 アロハは俺のアイデンティティーではないのだが。 「何って、火を出したりとか?」 「はぁ?私は魔術を聞いてるの。そうね、火が扱えるのなら火の壁<ファイヤーウォール>とかくらいは使えるのかしら?」 「え?魔法に名前なんてあるの?」 「だから魔術だって言ってるじゃないの。火の壁は術名。もしかして、魔術使えないの?」 魔術自体が初耳なんですけどね。 そんなこと言うと毒を吐かれかねない。 「あぁ、魔術ね!もちろん使えるさ!火の壁だったり水の壁だったりね!そうじゃなければ軍に志願なんてしないからね!俺は魔術でこの国、延いては家族を守るために志願したからね!」 勢いよく彼女、エミリアに捲くし立てた。 「そ、そう。中級魔術は使えるんだ。私は-----」 なるほど、魔法と魔術は違うものなのか。 そして、エミリアは自分のことを話し始めた。 どんな魔法が得意なのだとか上級魔術が使えるのだとか魔法学校では首席だったのだとかはたまた魔方陣における構築だとか。 しかし、この話の流れはマズい。 知らない単語しか出てこない。 話を変えてしまうことにしよう。 「----で、アロハは詠唱破棄はできるのかしら?」 変えるどころか聞いてなかった。 エイショウハキ? できると答えるべきか素直に聞くべきか。 「エイショウハキって何ですか?」 できると言うとやれと言われかねない勢いだったので素直に聞くことにした。 「詠唱を破棄することよ。そんなのも分かんないの?これだから田舎者は。本当に魔術使えるんの?そんなダサい格好しといて魔術も使えないなんて本当にダサいわ」 何度、この服装を弄れば良いのだろう。 もうダサいと言われることに快感を覚えてきそうだよ。 それにしても、なるほど、詠唱破棄か。 ん?詠唱の破棄? 「ひとつ聞いても良いかな?」 「何?」 「詠唱破棄があるってことは詠唱があるってことだよね?」 「そうだけど何?」 怪訝そうな眼差しを向けてくるエミリアには悪いが、どうやら限界のようだ。
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