1-1

13/16
前へ
/115ページ
次へ
別の策を考えることにした。 彼女は、彼女の手は震えていたのだ。 まぁ、無理もない。 最近まで学生で今でも学生の歳である彼女にとって山賊に囲まれるというのは初めてのことなのだろう。 怯えない訳がなかった。 俺でも怖い。 「君たちは僕が守るよ」 男は剣を握りしめ俺たちに言った。 不覚にも惚れそうになった。 「何か作戦でも?」 無言。 言っただけかよ。 使えねぇ。 それによく見ると男は片手から血を流していた。 先程の魔術でも喰らったのだろう。服も少し焦げ付いていた。 このままでは勝ち目どころか逃げることも儘ならない。 そこで俺は第3の選択肢を選ぶことにした。 山賊に取り入るのだ。 エミリアを連れて行ければいいのだか、力付くでは無理だろう。 魔術というものは男の腕を見る限り結構痛そうだ。 学校で首席とも言っていた彼女の魔術を喰らったら下手したら死んでしまうかもしれない。 手土産もなく山賊に取り入るのは難しいかもしれないが他に助かる術を見出だせない俺は早速、二人から離れて彼らに近付いていく。 敵意を見せないよう、なるべく笑顔で。 後ろからは男が危ないとか喚いているようだが気にはしない。 しまった。 敵意がないことを表す為にも手を挙げなくてはと思い両手を上にかざす。 瞬間、彼らは一斉に距離を空けたのだ。 彼らが何に怯んだのか。 それは魔術であろう。 手を挙げる仕草を魔術の発動だと勘違いされてしまったのだ。 誤解を解くためにも口を開く。 「あの… 「気を付けろ!詠唱されるぞ!弓を構えてるやつはそのまま放て!」 顔の真横を通り過ぎる数本の矢。 「危な!」 くそ、取り入るどころか警戒されてしまった。 運良く矢は俺には当たらなかったが、新しい矢を番え始めたので二人の所に逃げ帰ることにした。
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加