1-1

15/16
前へ
/115ページ
次へ
作戦は単純に囮を使いその隙に逃げるというものだ。 そして俺は囮役を買って出ることにした。 俺は前方にいる山賊たちのもとへと一気に走りだした。 山賊たちは武器を構えこちらの出方を伺うようだ。 俺は手から火を出し地面へと投げつける。そして風を起こして周りを火で覆う。 人より高く火を巻き上げ相手から見えないようにする。 実際、勢いよく走り抜けば熱くもないだろうし衣類に燃え移ることもないだろう。 だけど目的はダメージを与えることではなく目を眩ませることにある。 「今だ!」 俺の掛け声と共に作り出した火の壁の内側から三頭の馬が突っ切っていく。 これで彼女たちを逃がすことに成功したのだ。 ん?三頭?俺の分の馬がない! 俺は御者が居たことを忘れてしまっていたのだ。 本当ならば時間を稼ぐフリをして俺も馬に乗り逆方向に逃げ出す予定だったのに。 二手に分かれても追っ手が両方に来る可能性もないわけではないが、こいつらの狙いはエミリアだ。 だからエミリアの逃げた方向に追っ手は向かう筈だったのだ。 実際、山賊の半分はエミリアたちを追っていった。 「仲間を逃がすために時間稼ぎとはなかなか男らしいじゃねぇか!」 そして、半分はこっちに残ってしまった。 そして山賊に褒められた。 これは取り入るチャンスなのではないか。 「計画が台無しだ!てめぇだけは生きて帰れると思うなよ!」 チャンスではない。 計画が台無しなのはこっちだよ! 「覚悟はいいな?」 いくない! 考えろ! まずは考える時間を稼げ! 「本当に良いのか?」 俺は出来るだけ不敵な笑みを浮かべる。 相手は8人。 「いくら魔法使いだからといってこの人数なら 「俺は確かに魔法使いでもあるが、それと同時に」 俺は言葉を被せる。 そして、腰の木刀に手を掛けようとする。 「俺にはこいつがある」 「なんだぁ?只の木刀じゃねぇか?そんな棒っ切れで何ができる?」 「魔法使いの俺が只の木刀を持っていると思ってるのか?」 「ま、まさか、魔武器だと?」  魔武器ってなんだ? 「そうだ。だから俺に抜かせないでくれ」 切実に。 山賊たちは俺に対して只ならぬ空気を感じ取ったのだろう誰も動けないでいた。 そんな中、1人の山賊が痺れを切らし、剣を振りかざしこっちに向かってきた。
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加